かえつ有明中高等学校学校変革10年の取り組みをIDGsから考える
よりよい社会をつくるために、人や組織はどのように変化し、成長していくことができるのか。この問いを携えて、IDG Japan Essential Dialogue Networkは「変革のための対話会」を開催しました。
今回着目したのは、かえつ有明中高等学校。10年前から学校改革をスタートさせ、教員・生徒・保護者が一体となって「学校そのものを変える」という挑戦を続けてきた学校です。その歩みはIDGsが体系化しようとした内面的変革の実践そのものであり、日本における先進事例として多くの示唆を持っています。
かえつ有明10年の変革——内側から変わる学校
10年前、佐野副校長をはじめとした約10名の教員が「最高のクラスを創る」という願いを共有し、授業終了後から終電まで、一年間にわたって対話を重ね続けました。
マインドフルネス、ピーター・センゲの「学習する組織」とシステム思考、オットー・シャーマーのU理論、NVC(非暴力コミュニケーション)——世界の最先端の理論と実践を学びながら、教員自身の内面を変えることから始めた改革です。
その道のりは平坦ではありませんでした。多くの葛藤と批判の声を乗り越えながら、それでも対話を続けた教員たちの姿は、今では教育の現場を越え、企業の人財育成・組織開発の現場の「チェンジメーカー」たちに大きな勇気を与え続けています。
変革の成果は、生徒たちの行動に鮮やかに現れています。気候変動で沈みゆく運命とされているツバルという島国に関心を持った生徒たちは、クラウドファンディングで資金を集め、夏休みを利用して現地へ渡航。ごみ問題の啓発活動を行う中でツバルの首相に招かれ、官邸で3時間の会談を行いました。生徒が自ら問いを立て、行動し、世界とつながっていく——教員の内面の変容が、生徒の力を解き放った瞬間です。
また毎週水曜日、教員たちはオープンなスペースで研修を行います。教員が学校外で得た学びを持ち寄り、全体で共有しながら深め合い、そのまま授業として取り入れていく。学び続ける教員の姿を生徒が日常的に見ているという環境そのものが、「学習する組織」の体現です。
イベントの内容
当日は、IDGsの概要を踏まえながら、かえつ有明の実践をゲストと参加者がともに探究しました。
パネルディスカッションでは、かえつ有明の変革を最前線で牽引してきた4名が登壇。変革のストーリーの中から生まれた気づきをIDGsの理論と重ね合わせながら、具体的な実践の方法と内面の変化について語り合いました。
- かえつ有明 佐野和之 副校長
- CNVC認定トレーナー 今井麻希子さん
- かえつ有明保護者・イベントディレクター 福井牧子
- IDGs JAPAN HUB エッセンシャルダイアログネットワーク創設者 内田奈及子
パネルディスカッション後はグループ対話へ。参加者それぞれが「自分の組織・場所で何ができるか」を問い直す時間となりました。
その後のNVCミニワークショップでは、対話の質を変える非暴力コミュニケーションを体感。さらに新校舎「ブルーム棟」の見学ツアーでは、学びの場そのものの設計にも変革の思想が宿っていることを肌で感じました。
この場から見えてきたこと
『教員が変わると、生徒が変わる。組織の内側が変わると、そこから生まれるものが変わる。』
かえつ有明の10年は、IDGsが示す「内面の変容が社会を変える」という問いへの、日本からの力強い回答でした。
学校・企業・行政——場所は違っても、変革のプロセスには共通の本質があります。この日の対話は、それぞれの現場で「チェンジメーカー」として歩む参加者一人ひとりの背中を、静かに押す時間となりました。